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第八章

「解んない。今日は直接こっちに来たから」
 直子の答えに、星来はさらに頭が混乱してきた。
「どうして今日はこっちに?」
 直子に疑問をぶつける星来。すると、意外な答えが返ってきた。
「あたしにとってミノルは男とか女とか関係ない友達……親友だけどさ、星来ちゃんから見たらあたしはよその女でしょ? そんなよその女がミノルの家に入り浸ったら星来ちゃんに悪いかな、と思って」
 以前の直子は、ミノルと星来の仲がなかなか進展しないので、刺激を与えるためにわざとミノルの家に行っていた部分があった。しかし、先日ミノルの星来に対する思いを知ってからは、もう自分がミノルの家に行く必要は無くなったな、と感じたのだ。
 しかし、星来はそのあたりの事情は全く解らない。
「……直子さんにだけはそういう気を使って欲しくないな。直子さんとアイツの関係は私はもう百も承知だから。たとえばアイツが男友達を家に泊めることがあっても、当たり前のことだけど私はなんとも思わないしね。直子さんは女の人だけど、それと同じに受け止めてるから」
 星来の言葉に、直子の顔に得意の悪戯っぽい笑みが浮かんだ。
「ふ〜ん。それって、あたしだから許せる、他の女は許せないって意味に聞こえるよ。なるほどねぇ」
「そ・そんなこと! ……って、否定しても無駄か。直子さん、全部お見通しだもんな」
 一瞬慌てて否定しようとするが、苦笑いしながら頭をかく星来。
「星来ちゃんも今日は素直ね〜」
「私“も”?」
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