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第六章

「い、いや……」
 とミノルは否定するが、その後の言葉に詰まってしまう。
 ちなみに痛みにうずくまる崇広に手を差し伸べる人は一人もいなかった。


 嵐のようなひと時が過ぎて、恵と崇広は帰ることになった。
「ほら、帰るよ。早うついてきてよ」
「ちょっと待てよぉ」
 と言いながら出て行く二人を見て
「完全に尻に敷かれてるね〜」
 と直子がクスリと笑う。
「自分の仕事話しても何も起こらないんじゃないの? 何か起こりそうになっても恵ちゃんが上から押さえつけそうだけど」
 星来が呟く。
「え? 恵ちゃんも星来ちゃんと同業者なの?」
 直子がキョトンとして星来に聞いた。
「え? あ、うん。一応約束だから、会う事無いとは思うけど、もし崇広クンに会う事があったら、この事は言わないでよね」
「まあ、そういうことは無いだろうけど、一応覚えておきましょう」
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