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第六章

「お前、なに穿いてる?」
「ミノルのパンツ。勝手に借りたよ、ごめんねぇ」
「その下は?」
「トランクスって下着じゃない。なんでその下になにか穿くのよ」
「だったらあぐらをかくな! パンツの裾の脇から中の具が見えてるんだよ!」
 直子は自分が穿いているミノルのトランクスをチラと見た。確かにミノルの立っている位置からは角度的に“中身”が見えているようだ。しかし直子は平然としていた。
「だからなに? いちいちそんなこと気にしないでもいいじゃん。減るもんじゃないし」
「減るもんじゃないって……。少しは恥じらいくらい持てよな!」
「ミノル相手になに恥ずかしがるのよ」
「お前はそれでいいかもしれないけど、俺には星来がいるんだぞ!」
 言った後でしまったと感じるミノル。思わず自分には星来がいると大声で宣言してしまったのだ。
「……なに大きな声で言ってんのよ……」
 さっきまで黙っていた星来が、少し怒った口調で言った。口調は怒っているが、顔は少し赤くなっていた。直子は星来とミノルの顔を交互に見てから
「ミノルも星来ちゃんも素直じゃないんだから〜」
 と嬉しそうに言う。そして
「仕方ないなぁ、ミノルだけならいいけど星来ちゃんもいるんだから、ちゃんと中が見えないのに穿きかえるよ」
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