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第六章

 恵はユニットバスの入り口で、中の直子に
「ちょっといいですかぁ?」
 と声をかけた。
「どうぞ〜」
 と直子が返事を返した。恵は慌てた素振りでいそいそと中に入った。
「ま、コーヒーなんかのカフェインは利尿作用があるからな。よっぽど我慢できなかったのかな?」
 ミノルがボソッと呟くと
「バカタレが」
 と、星来の拳が飛んできた。ミノルは殴られた頬をさすりながら星来に訴える。
「なんだよいきなり」
「やかましい」
 そこに恵がユニットバスから下腹部に手をあてつつ出てきた。
「いや〜、まいったわ。始まってしもうたわぁ」
 その言葉で、ミノルは何が起きたのかようやく理解した。
「中の直子さんも今は持っとらん言うし、星来ちゃんは持っとる?」
「家に帰ったらあるけど。持ってこようか」
「あそこまで戻るんやったら、そのへんのコンビニの方が近いからなぁ……」
 男であるミノルはこの会話には参加できない。聞かない振りをして床に落ちている雑誌を拾って適当にページをめくる。
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