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第六章“ラストの客”相手の“サービス”が終った時点で既に営業時間は終っていた。他の店はどうなのかは知らないが、星来の店は閉店時間ギリギリまで客は受け付ける。その客もしっかり時間をとってサービスするのだ。この店はサービス時間は四十分。ミノルが入店したのが閉店十分前だったため、星来が控室に戻った時には閉店時間を三十分以上過ぎていた。既に退勤している女の子もいる。しかし、例の星来のキャバサン姿が似合うと言っていた彼女は残って雑誌の漫画を読んでいた。星来に気付くと雑誌を閉じて声をかけてくる。「あ、お疲れ〜。なかなか戻ってこうへんから延長かと思ったわ」 「ちょっと熱中しすぎたかも……」 苦笑する星来。 「そんなに気が合う客やったん? 彼氏が可哀想だよ?」 「いや、その客ってのは彼氏ってヤツだったから」 彼女は目を丸くした。 「彼氏、この仕事知っとるん!?」 「以前、指名数キープのためにつれてきた事があるから」 「羨ましいわぁ。理解ある彼氏やねぇ。私のはダメやわ。私の仕事知ったら何が起こるか解らへんわ。そのくせ自分はソープとかによく通ってるんやけど」 「仕事の内容で人を判断する事はないどころか認めてくれるんだからいいヤツだよ、本当に」 素直な感情で星来は言った。 |
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