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第六章

 控室の壁は、一面がマジックミラーになっていて、客の待合室から丸見えになっている。客が好みの娘を選ぶシステムなのだ。しかし、これは女の子の指名数には加算されない。名指しで誰々をお願いしますと従業員に申し出た場合だけが指名となる。基本料金さえ払えばマジックミラーで女の子を選べるが、名指しによる指名だと別に指名料がかかるのだ。
 星来は控室ではけっして立ち上がったりはしない。背が高すぎるので客に敬遠されるのを避けるためだ。幸い座高は低いほうなので、座っていれば他の女の子と比べても、少し高い程度であまり違いは感じられない。
 マジックミラー指名(いわゆるフリー客)を何人かこなして、そろそろ閉店時間だという頃に
「メグミさん、本指名です」
 と呼ばれた。ラストの客で、本日初めての本指名に少し驚いて
「あ、はい!」
 と必要以上に大きな声を上げて立ち上がる星来。







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