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第五章

「本当だ。初めて聞いた」
「もっとも、これ作った人はお前の事なんか知るわけねぇけどな」
「それでもいいよ、この曲。気に入ったよ」
 星来は心から嬉しそうな顔をした。
「じゃあオレに何か言うことがあるだろ」
「何かって?」
 一瞬キョトンとする星来。
「人から物を貰ったら、くれた人になんと言うか、親から教えてもらってるだろ」
 ミノルはわざとらしく、偉そうに胸を張って自分を指差す。
 星来は恥ずかしそうに頬を赤く染め、ミノルと視線を合わせないように目だけでキョロキョロしつつ
「あ……ありがと……」
 と、小さく呟くように言った。ミノルは内心「こいつ結構可愛いとこあるな」と思ったが、敢えて
「あ〜? なんだって? 聞こえないぞ?」
 と言いながら星来の顔を覗き込む。
「だ・だから……、もう……、言えばいいんでしょ、言えば! CD下さいまして、誠にありがとうございました!」
 半分やけくそ気味に言う星来。ミノルはフッと笑みを漏らすと、星来の頭に手を置いて言った。
「どういたしまして」

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