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第五章

「人にはそれぞれ事情がある、理由なんてそれだけでいいんじゃないか」
 ミノルの言葉に星来は小さく「よかった……」と呟いた。

「さ、今のオレはあくまでただの客だからな。せっかくだから遊んでいくか。しっかりサービスしろよ、“メグミちゃん”」
 しんみりした空気を打ち消すようにミノルはわざと明るく言って服を脱ぎ始めた。
「よ・よぉ〜し! 私の手と口のテクニックでどれだけ持ちこたえられるか勝負だ!」
「手と口? ここってセックスは無しなのか?」
 星来はクスクス笑いながら壁の張り紙を指差した。『本番行為禁止 罰金100万円』と書いてある。
「したかったら、今日の仕事が終わってから思う存分やってやるよ」
「バーロー、メグミちゃんならともかく星来とはやりたくねぇ」
 二人は顔を見合わせて思わず大声で笑った。

「見たところ、結構客が入ってたみたいだけど、どのくらい仕事するんだ?」
 その日の夜、ミノルは星来の家のベッドの中で、隣に寝ている星来に聞いた。
「少ない日でも四・五人。多いときは十人以上相手するね」
「それで指名足りなかったのか? ……まぁ、フリーの客(特に指名の無い客)をいくら相手しても指名数にはならないからな。だったらリピーターがいないわけだ。サービス悪いんじゃないのか、お前?」

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