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第三章

 ベッドは勝手に星来と直子が占拠した。
「部屋主に床で寝ろってか?」
「客人に嫌な思いさせる家なの? ここは」
 ああいえばこういう直子。星来は既に寝息を立てている。
 仕方なくフローリングの床に寝転ぶミノルに
「ねぇ、ミノル。星来ちゃん口ではああ言ってるけど、ミノルのこと本気で好きだよ」
 と直子が言う。
「なんでそう思うんだよ」
「あたしのような他人には作った自分を演じてるけど、ミノルに対しては素なのが明らかだもん。ありのままの自分を見て欲しいんじゃないの? それで嫌われたら仕方ないって言うか……、いじらしいじゃない」
 直子の言葉にミノルはかなり思い当たるフシがあった。しかし……ミノルは現在、医者に肋骨にヒビが入っていると言われている。言うまでも無く空手の有段者、星来の仕業だ。
「ありのままの自分って、手加減無しの本気で人を怪我させる奴をどう見ろって言うんだよ」
「そういうことでしか自分を表現できないのね。それに、今日あたしが来た事で、星来ちゃん態度には出さないけど絶対動揺したと思うのよ。ミノルは星来ちゃんを遠ざけたかったから、わざとあたしを呼んだのね」
「まぁ、そういうことだけど」

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