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第三章

「六十倍だろうと六百倍だろうと関係無い。このチョコは間違いなく二万円したからね」
「どこの世界に二万円もするただの板チョコがあるんだよ!? レシート見せろ!」
「レシートは無いけど、これならあるよ」
 星来はポケットからなにやらカードを取り出した。使用済みのパッキー(パチンコのプリペイドカード)だ。受け取って確認するミノル。
「五千円が四枚……、二万円……か……」
「本当なら今ごろこんな所になんていないで美味いもん食べに行ってた筈なのに……。全然出やしない」
 呟くように言う星来に
「……こんな所で悪かったな。だったら美味いもんとまではいかなくても、このチョコ自分で食えばいいだろ」
 と答えるミノル。
「義理」
「義理?」
「一応私とアンタは付き合っているってことになってる。だから義理で持って来ただけ。付き合って無かったら自分で食べるよ」
 付き合っている相手に対しての義理チョコ……。初めて聞くパターンだ。


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