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第二章

 披露宴が終わり、引き出物をぶら下げて新幹線にミノルは乗り込んだ。幸い自分が新婦側の席に座っても何も言われなかったのでほっとしていた。
「……しかし、打ち合わせもなくいきなりスピーチまでやらせるかよ……」
 せっかくのご馳走だから食べなきゃ損だと頬張っている時にいきなり名前を呼ばれた事をミノルは思い出して苦笑した。ミノルの肩書きは新婦の仕事上の先輩という事になっていた。
 ふとミノルは周りの視線が自分に集まっている事に気付く。スーツは披露宴が終わった時点で返したので今着ているのは寝巻き代わりの部屋着だ。
「仕方ねーだろ、着の身着のままで連れ去られたんだから……」
 ミノルは心の中で呟いた。

 アパートの部屋に戻ったところでミノルはギョッとした。部屋の前で星来が体操座りしていたのだ。
「私がここに来るときに留守にするなんて、いい度胸してるじゃないの」
 ミノルにとっては全くいわれの無い言いがかりだ。
「今日ウチに来るなんて言って無かったろ。そんなの知るか」
「ま、いい。帰る」
 星来が立ち上がろうとするが、足元がふらついて倒れてしまう。
「おい? どうしたんだよ」
 額に手を当てるとすごく熱い。仕方なくミノルは星来を部屋に上げた。

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