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第二章

「俺が女だったらたとえ用事があっても駆けつけるけどさ、男なんだから仕方ないだろ」
 今にも泣きそうな顔の直子の顔を覗き込むようにミノルは言った。……といきなりそのミノルの鼻に指を突っ込む直子。嘘泣きだった。
「このっ! 何しやがる!」
「はいはい、静かに。朝早いんだから。ところで今日、用事ある?」
 ミノルは鼻を手でおさえながら答えた。
「特に無いけど、なんだよ」
「じゃあ来なさい」
 と、直子はミノルの手を引っ張る。
「どこに行くんだよ!?」
「あたしの車」
「じゃあ、その着替えくらいさせてくれよ、これは部屋着だから……」
「いいからいいから」
 ほとんど拉致だ。ミノルは渋々直子の車の後部座席に座った。
「どこに行こうって言うんだよ」
 直子は答えずに車を走らせた。しばらく進んだところでミノルはウトウトと寝てしまった。車が首都高に乗ったところまでは覚えている。


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