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第一章

「何言い出すんだ!? 俺はお前が嫌いなんだぞ! お前だって俺の事嫌いだって言ったじゃないか!」
「ああ、嫌いだよ。それが何か?」
 平然と答える星来。
「何かって……。普通付き合うって言うのは好きなモン同士って相場が決まってるだろ!」
「普通はね。でも私、アンタの事も嫌いだけど、それ以上に“普通”てのが嫌いなのよ」
「でも、嫌いなモン同士が付き合っても上手くいくわけ……」
 ミノルの言葉を星来は遮った。
「簡単に上手くいっちゃ面白くないよ。これはゲームだよ。どっちが先に根を上げるか賭けてみない? あるいは、どっちかがどっちかを好きになってしまったら負けっていうのも面白いかな」
「それだったら俺は負けない自信があるぞ。お前の事好きになるなんてありえないからな」
 彼女の表情が不敵な笑みから悪戯っぽい笑みに変わった。
「勝負に乗ったね。じゃあ付き合うってことで決定だ」
 ミノルは慌てた。
「ちょっ、誰が付き合うって……」
「負けるのが怖い?」
 ここで引いたらそれこそ負けだ。


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