もどる |
第一章「いいかげんにしろよ!」「やめなさいって!」 仲間たちが中に割って入ってきたときは、もう取っ組み合い寸前の状態だった。 ミノルと星来は自宅の最寄り駅が同じだった。いつもと同じように、ミノルはわざと別の車両に乗っていた。しかし、今日は単に「嫌いだから」という理由だけではなく、我ながら大人気無くて合わす顔が無い、というのが大きかった。 ミノルと星来の自宅は駅を挟んで反対側だ。仲間だから電話番号くらいは知っている。アパートに帰ったら一応電話で謝った方がいいかな、と思いながら彼は北口から駅を出た。しかし、南口側のはずの星来も同じ出口から出てくる。 ミノルは、彼女が空手をやっていて黒帯だという事を知っていた。まさか喧嘩の続きをしようって言うんじゃないだろうな。彼は気付かない振りをしてアパートに向かった。 アパートの前に着いた。ここで素直に部屋に戻ったら押しかけられるかも知れない。星来は彼のアパートは知らないはずだった。わざと近所をうろつきまわって彼女を撒いてから帰った方が得策だとミノルは考え、アパートには入らずにそのまま歩き続ける。 しばらく歩いてから後ろを振り返ると彼女の姿は無かった。ミノルはほっと胸をなでおろしてアパートに帰った。 |
前ページ 次ページ |