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第五話「電車でGO!」

て事? もう、お祖父さんったら、正直なんだからぁ。
「え? どこが似てるんですか?」
「卑弥呼は残念な事にペチャパイでのう」
「…………」
 なぜかこの時、人を殺したいと思った瞬間と、殺せる機会が同時に訪れたら、殺人をしない人は一人もいないという話をなぜか思い出した。最初にも「なぜか」とあって、最後の方にも「なぜか」がある。文法的には明らかにおかしい。だけど、これはあたしが「なぜか」というのをめちゃくちゃ強調したくなったという気持ちの現れだと思って欲しい。つまり、その時、あたしは「そーゆー」気持ちになっていたのだ。わかるかな?
『なんか、お祖父さんを見る目、殺意に満ちてるね』
 と先生。
「え? あ、そう!? やだな、あたしってば。あは、あは、あはははは」
 あたしは必死に誤魔化した。
『何考えてるかなんて思考読めば解るから別に誤魔化さなくていいよ。それにわざわざ思考読まなくても何を考えてるかは充分過ぎるほど想像できるし。まあ、お祖父さんが何を言おうが、あまり気にしない方がいいよ、昔はともかく今はただの色ボケだから』
 先生のいう色ボケという言葉には力いっぱい同意したいところだけど、すぐ側に当の本人であるお祖父さんがいるから「そうなんだあ」なんて言えない。
「あはははははは」
 とりあえず笑っておこう。
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