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第五話「電車でGO!」

いる人の胴に手を回している状態を想像してくれたらいいだろう。
「大丈夫〜。落ちたら落ちたで先生がG(重力加速度)よりも早く急降下して受け止めてくれるでしょ?」
『あのねぇ……』
 などと言い合っているうちに、隣町の駅に着いた。

『おジイ!』
 先生の声に、向き直ってみると、なるほど確かにこれはどう見ても御老人。って、老ドラゴンじゃなく老人!?
「せ・先生? あの人が先生の……?」
『そう。お祖父さん』
「で・でも、どう見てもあたしには人にしか見えないんだけど……」
 そこに、先生の“お祖父さん”がこちらに気付いて近づいてきた。
「おお〜、辰波、来たか」
 とお祖父さん。一瞬誰の事かと思ったけど、先生の本名は佐藤一郎之介辰波だった。アパートの表札に書いてるように普段は「一郎」と名乗っているけど、お祖父さんは「辰波」と呼んでいるらしい。
 って、これはテレパシーじゃなく、紛れも無い肉声!?
「先生? お祖父さん、人間じゃないの?」
 小声で先生に聞くあたし。
『お祖父さんくらいになると、人の姿にだってなれるし、人語も話せるよ。私はまだ無理だけどね。ただお祖父さん、ちょっとドジっちゃってね』
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