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第五話「電車でGO!」

 と同意する。あたしは
「無理に引き止めちゃ悪いよ。先生にも都合ってものがあるんだから」
 と口では言いながら、先生に「帰るなら帰ってよ」と目で合図した。本音と建前を使い分ける。あたしもずるい人間になったものだ。もっとも、いくら本音を隠そうが、人の心を読める先生には全く無意味かも知れないけど。
『それじゃあ、お言葉に甘えて』
 おいおいおいおい。
「先生、テレパシー、錆びてる?」
 テーブルにつきながら聞くあたし。
『どうして?』
 キョトンとした目で答える先生。
「いや、別に……」


 食事が終わったところで
『それじゃあ、ちょっとこれから隣町の駅に行かないといけないので、失礼します』
 と先生が立ち上がりながら言った。
「なにか用事?」
 あたしが聞くと
『お祖父さんが隣町に住んでるんだけど、今日家に来るっていうからね。迎えに行くんだ』
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