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第五話「電車でGO!」

『散歩してたところをお父さんに声かけられてね』
 と勇者……じゃなくて先生。あたしはカクカク頷いた。
『休みの日は起きるのこんなに遅いんだ』
「まあ、休みでなくても遅刻の常習犯……」
 言いかけるお父さんの口を手で塞いで
「あ、その、ドラクエにはまってしまって」
 と答えるあたし。
『え!? ドラクエVIII買ったの!?』
 目を輝かせる先生。
「あ、いや、その、先生、ちょっといい?」
 あたしは先生に手招きした。先生は『はい、これで終わり』と将棋盤の駒を動かすと嬉しそうにあたしについてきた。背後でお父さんの「うわ〜、やられた〜!」という声が聞こえてきた。今の一手で詰んだらしい。


 あたしの部屋で、“ゲーム機”と“ソフト”を見た先生は明らかに落胆の表情を浮かべていた。
『今ごろ、こんな大昔のゲームやってるの? それとも新作にチャレンジする前に、改めてシリーズ旧作を全部やろうとでもいうのかな……?』
「お父さんが騙されて買わされたの。だからお父さんは未だにこれを『いま話題のドラクエ』だと信じてる」
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