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第五話「電車でGO!」

 翌朝八時頃、お父さんは玄関の郵便受けに入ってる朝刊を取るために家のドアを開けた。その時、鳥にしては大きな、何かが羽ばたいている音が頭上で聞こえる。お父さんは何気なく空を見上げた。そして頭上の何かに笑顔で声をかける。
「やあ、先生。朝の散歩ですか?」


 あたしが起きたのは正午前だった。欠伸をしながら、まだ覚醒していない状態の頭のままで階段を下りる。ところが、居間の様子を見た瞬間、一気に完全に目が覚めてしまう。
『王手飛車取り!』
「あ、それ待った!」
『待った無しですよ』
 と、談笑しながら仲良く将棋を指している二人。いや、一人と一頭。「一人」はお父さん。そして「一頭」は……。
「で・伝説の勇者!?」
 素っ頓狂な声を上げてしまうあたし。
「おう、今ごろ起きたか」
『おはよう。お邪魔してるよ。伝説の勇者って?』
「あ、いや、その……、先生、いったいどうしたの!?」
 そう、お父さんと将棋をしていたのは、ロトの血を引く勇者いちろう……もとい、佐藤一郎、家庭教師の先生だった。
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