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第四話「テストはお任せ」

 本物の教科書は見てないけど、全く同じ内容の教科書の映像があたしの頭の中にある。頭の中で数学の教科書をパラパラとめくった。
「ン……と、この公式だな」
 でも、あたしは、暗記系も苦手だけど、計算自体が余り得意ではない。公式に問題の数字を書き足す事で計算式は出来上がった。だけど、ここから回答を導き出すのは……。
「え!? なにコレ!?」
 思わずあたしは大声を上げてしまった。頭の中に、今度は電卓が現れたからだ。
『本番のテスト中にそんな大声上げたら学校の先生に怒られるよ』
「はいはい」
『「はい」は一回』
 あたしが「はいはい」と言ったのは条件反射みたいなもので、意識しての言葉ではなかった。先生のツッコミにも反応せず、あたしは一生懸命“頭の中の”電卓を叩いていた。

「──できた!」
 一枚目の数学が終わった。
『一枚終わるのに二時間か。もう少しトレーニングしたほうがいいね』
 時計を見ながら先生が言う。でも、そんな事問題ではなかった。今までのあたしだと、どんなに時間がかかっても全ての解答欄を埋めることは不可能だ。それが“たった”二時間で埋めれるなんて自分でも信じられない。
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