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第四話「テストはお任せ」

 確かに円の面積は中学で習ったはずのこと、大化の改新の語呂合わせにいたっては小学校なんだけど、こういう暗記系は大の苦手で、テストでは全滅だったはず。
『歴史の教科書の六十三ページの内容は?』
 その瞬間、あたしの頭の中に教科書が現れた。頭の中で教科書をパラパラとめくる。先生の言った六十三ページが開かれた。挿絵はもちろん本文の一字一句までハッキリと見える。
 あたしは慌ててノートを開き、頭の中の教科書を“書き写した”。そして本物の歴史の教科書、六十三ページと見比べた。
「全く同じ……!?」
 あたしの今までの勉強に対する概念が完全に崩壊した。勉強では文章・言葉として記憶しているものだと思っていたんだけど、これは“映像”としての記憶だ。ハッキリと目の前にあるかのように頭の中に教科書の映像が出てきた、わけだ。

『これ、テストの練習として作ったんだけど』
 呆けてるあたしに先生が紙を何枚か出した。
『これは教科書見ないでやってみて』
 呆けたまま紙を受け取り、鉛筆を手に持った。
 一枚目は数学だ。
「えっと……この問題で使う公式は……」

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