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第四話「テストはお任せ」

 先生は力無く
『そのことはもういいから。曲がりなりにもこの一週間、問題集を全部とはいかなくてもかなりやってたみたいだし、反省してるみたいだからね』
 と、聞き取りにくいほどの小さな声で言った。小さな声ってことは、テレパシーもかなり弱々しいということだ。
「あのう、先生、疲れてるんじゃないのかな……?」
『この一週間、ろくに寝てないからね』
「寝てない?」
『毎晩君が寝てから、テレパシーで君の記憶に直接勉強を教えてたから』
 ……はい?
「ここんとこ、先生に教わる夢を見てると思ってたらそれだったの!?」
 先生はにっこり頷く。
「あのねぇ! 確かに先週、あたしは悪かったと思ってるよ! でも、勝手に人の記憶を操作しないでよ!」
『大化の改新は?』
「無事故で終わった大化の改新、645年! そんなことより、人の記憶を……!」
『円の面積は?』
「πr(パイアール)の二乗! こんなの中学レベルでしょ!? あたしはもう高校生! だ〜か〜ら〜、そんな事じゃなくて! ……え……?」
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