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第四話「テストはお任せ」

 美人・綺麗・べっぴん、頭がいい・聡明・賢い、気立てがいい・性格がいい・心が美しい……。おバカなあたしでも同じ事を何度も繰り返してるだけってわかるぞ。意外にも先生は“典子さん”に関わると人の思考を読むどころか自分の世界に入ってしまうらしい。
「本当に好きだったんだね」
 あたしが言うと、先生は急に目に涙を溜めた。
『そうなんだ! 好きだったんだ! 子供の頃結婚しようって言ってたのに! 典子の馬鹿──ッ!!』
 だめだこりゃ。
「ま・まあ、典子さんの事は分かったから。じゃあ、この問題集、来週までなんだね。そろそろ時間だから、今日の勉強はお開きにしよう、うん」
 これ以上先生がいたら、延々と愚痴を聞かされる羽目になる。あたしは半ば強引に話を切り上げさせて、先生を強引に帰した(追い出したとも言う)。
 先生がいなくなったあとに残された分厚い問題集の山を見てあたしはため息をつく。
「これ全部は百パーセント無理だし……、一応、やろうとした姿勢だけは見せようかな……」
 山の一番上の問題集を一冊取ってページを開く。
「……」
 あたしは無言で問題集を閉じ、山に戻した。
 最初のページの一問目でいきなり挫折。


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