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第二話「名前は佐藤一郎」

「そういう問題じゃなくて! ……ったく、寿命が縮んだじゃない。マジで怖かったんだから!」
 言いながら不覚にも涙がこぼれてしまったあたしであった。そりゃまあ、あたしだって人並みに女の子だからね。いや、あんな怖い思いしたら男女関係無く泣いちゃうな、多分。
『あ、悪かった、ごめん!』
「……ケーキ食べ放題……」
『へ?』
「ケーキ食べ放題!」
『解った、今度ご馳走するから許してな?』
 などと言い合いしながらも、心の奥底では「コレって、絶対人間とドラゴンの会話などではない」と冷静に考える部分も残っていたあたしであった。

 とかなんとかやってるうちに、あたしと先生はとある人気の無い海岸についた。
 先生はあたしを砂浜に下ろすと、海の中へ入っていく。
「お〜い、どこ行くのよ」
『万が一って事があるから、念のため。水に向かって火を吐いても勝手に消火できるからね。ま、その気になったらこのあたり一帯干上がらせるだけの火力も出せるけど』
 などと言いながら、膝のあたりまで水に浸かった。
『じゃ、いくよ』
「はいはい」
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