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第二話「名前は佐藤一郎」

 確実に江戸時代は経験してるはずだ。もしかしたらもっと昔かもしれないのに、先生の名前は今の時代に違和感が無さ過ぎる。
『あ〜それね。実は本名は一郎之介辰波と言うんだ。戸籍にもそう載ってるよ』
 さとういちろうのすけたつなみ……? 武士かよ……。仮にそうだとしても……。
「かなり偉そうな名前だよね」
『まあ、それなりの地位にはついてたかな。ちなみに鎌倉時代、元寇といって蒙古が二回日本に攻めてきたけど、それを二度とも食い止めたのはお父さんだよ。時の執権、北条時宗の密命で。ブレス使うまでもなく、軽く羽ばたいただけだけどね』
 竜神様って言うくらいだから、ドラゴンの羽ばたきによる風も“神”風なのかな……。
『たまたまその時、小雨がぱらついてたらしいけど、お父さんの起こした風のせいで、記録では暴風雨となってるんだけど』
「あ〜、もう、わかったわかった」
 ようするに、先生のお父さんが北条時宗に仕えてたくらいだから、先生自身もかなり偉かったわけだ。
「それがなんで家庭教師なんかしてるの?」
『徳川慶喜が大政奉還したから』
 さよか。



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