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第二話「名前は佐藤一郎」

 あたしはドアに「お母さんへ ちょっと出かけます」と書いたメモを貼って家を出た。聞き出した住所を訪ねることにしたのだ。
「○△町、○丁目、×番地、永田荘。永田荘……? アパート?」
 あまりにも平凡な住所……。アパート住まいのドラゴンって滅多にいないんじゃないかな……。どっかの岩山を連想したんだけど……。
 迷うことなく、目的のアパート(やっぱりアパートだった。それも平凡な)にあたしは着いた。ここの二○三号室だって言ってたな。
 部屋の前に着き、表札を見る。

 佐藤一郎

 ……。もう考えるの嫌になってきた。
『あれ〜? どうしたの?』
 不意に声をかけられたので向き直ると、買い物帰りらしく、コンビニの袋をぶら下げた先生が立っていた。どこからどこまで普通に生活してるんだ?
「あ・あの、先生、佐藤……?」
『そうだよ、佐藤一郎。そういえば自己紹介してなかったね』
 あたしは頭を抱えた。
『どうしたの?』
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