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第二話「名前は佐藤一郎」

「ありがとうございます」
「いえいえ、ご苦労さまぁ……、と、ちょっと待ってください!」
 慌てて、帰ろうとするおばさんを呼び止める。せっかくのチャンスだから聞いておこう。
「あの、おたくの新聞を取っている人で、人ではない人いますか?(変な日本語)」
 お母さんは新聞の投書欄を利用して先生に連絡を取ったわけだから、もしかしたら知っているかもと思ったのだ(もう「先生(?)」と書かなくてもいいだろう)。もっとも、このおばさんの担当の区域で無かったらどうしようもないけど。
「いますけど、その方がどうしました?」
 あくまで普通に答えるおばさん。
「実は、家庭教師してもらってるんですけど、解らないトコがあるから聞きに行こうかな、と思いまして」
「ああ、そうですか。確かにあの方、すごく頭がいいですからね」
 と、普通に言いながらおばさんは住所を教えてくれた。簡単に客のプライバシーを教えてもいいのかなぁ?
「ところで、人ではないって、どんな人ですか?(またまた変な日本語)」
 念のために聞いてみる。人以外の生き物が新聞を読んでいるなんて、そうそう滅多にあるものではないけど、もしドラゴンではなく別の生き物だったら見当違いになってしまうから。もしゴブリンとかだったらちょっとイヤだし(頭がいいと言ってたから違うだろうけど)。
「羽がある恐竜みたいな方でしたよ」
 それだ(多分)。
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