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第一話「先生がやってきた」

 う〜む……。
「あたしってば、暗記系がダメなのよ。漢字の書き取りとか、英単語のスペルとか、化学式とか、年号とか……」
『じゃあ、大化の改新は?』
「え・え〜と……フジサンロクニオームナクだったかな……?」
『……教科から違ってるし』
 先生(?)は頭を抱えた(正解は「無事故(645)で終わった大化の改新(歴史)」。フジサンロクはルート5(数学))。
 その時、一階から
「ただいまー」
 という声が聞こえた。お父さんが帰ってきたみたい。程なくして、お父さんの階段を上る足音が聞こえる。そしてノック。
「どうぞ」
 あたしが答えると、ドアを開けてお父さんが顔を出す。
「どうも、お世話になってます」
 と“普通に”先生(?)に話し掛けるお父さん。うちの両親って、似たもの夫婦だな……。この親にしてこの子ありのあたしも人の事言えないんだけど…。


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