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第一話「先生がやってきた」

 使ってないけど。
『恐らく、幼い頃ドラゴンに襲われたとかいう事があって、その記憶が今もなおトラウマとなってしまっているんじゃないかな? ドラゴンにも悪いやつとかいるからね』
「んな過去あるか──!!」
 あたしはずっこけそうになるのを必死にこらえて腹の底から叫んだ。
「ハッキリ言っておきます。あたしはドラゴンなんて、今日生まれて初めて見ました! それまでは一度たりとも見たことありません!」
 なんでこんなこと力説しなきゃいけないのよ。
『見たことがない? 珍しい人ですね』
「あんたの存在自体のほうがよっぽど珍しいよ! だいたいドラゴンならおとなしく物語の中だけに存在しておけばいいのよ!」
『あ、それって偏見だな』
「偏見って……、あのねぇ……」
 と、先生(?)はいきなり胸いっぱいに空気を吸い込んだ。まさか口答えする教え子に体罰(火炎放射)?
『……んで? 続きを聞きましょうか?』
「あ・えっと、あの……、ここの英訳がいまいちよく解らなくて……」
『ああ、これはジャックが欲するところの……』
 ……あ〜ん、これじゃ生殺しもいいところだよぉ〜。人間じみてても仮にもドラゴンだしぃ〜……。
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