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第一話「先生がやってきた」

 だいたい、なんでこんな事になってしまったんだろ。そうだ、これはきっと夢なんだ。本当のあたしは、気にいった音楽が無くて不貞寝したまま今もぐっすり寝てるんだ、きっとそうだ。
 その時……。
『くだらない事考えてるヒマあったら単語の一つでも覚える!』
「は・はいっ!」
 いきなり“怒鳴られて”思わず背筋をピンと伸ばしてしまった。
 え?“怒鳴られて”……? 確か喋る事は出来なかった。でも今の言葉ははっきりと“頭の中に直接飛び込んできたように”鮮明に聞こえた……。“頭の中に直接飛び込んできたように”…。ドラゴンって物語の中なんかでは、人もはるかに及ばないほどの知性と能力の持ち主として扱われてる事が多いよな……。そう、すごい能力の……。と、いう事は……。
「テレパシー使えるなら最初からやってよ!!」
 そう、これは紛れも無くテレパシーだ。テレパシーで意思の疎通が出来るドラゴンなんて今まで会った事ないから(人間も会った事無いけど)気付くのにちょっと時間がかかってしまった。
『たまたまそこに紙があったもんで』
 のほほんと答える先生(?)。
「ドラゴンの割にはセコイのね」
 ドラゴンの割にはってどういう意味……? 言ってて自分でも訳解らなくなってきた。
『セコイ? 確かにそうかもな。世の中の不条理さが私を歪ませた』
「そ・そこまで思い詰めなくても……」
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