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第一話「先生がやってきた」

「怪獣なんていないじゃない」
 と、お母さんの声。でも、さっき確かに……。あたしはそっと部屋の中を覗いた。次の瞬間、あたしは思い切りずっこけてしまう。
「先生、怪獣なんて見ましたか?」
 なんてお母さんが普通にあの爬虫類に話し掛けていたんだもん。
「せ・先生!?」
 素っ頓狂な声を上げるあたし。当然の反応だろう。
「言ってたでしょ、今日からお世話になる家庭教師の先生よ」
 確かに聞いてたけど。
「お母さん、ちょっと」
 あたしはお母さんの腕を掴んで引っ張った。
「え? なに?」
「いいからちょっと!」
 部屋の外まで引っ張り出したところで
「どういうこと!? 人ではない先生なんて聞いて無いよ!?」
 と猛抗議。これも当然の反応だろう。
「前もって言っておいた方が良かったかしら?」
 キョトンとした顔で言うお母さん。だからそうじゃなくてぇ……。
「前もって言ってたとしても、あんなバケモノ、絶対嫌だからね!」
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