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20R ニューホープ後編ながらクスリと笑った。中谷さんが振り向いて舌をペロッと出した。中谷さんの目にも涙が見える。バツ悪そうに笑う中谷さんの顔は「やばいよ、泣いちゃったよ」と言っていた。中谷さんも思うところは一緒だったみたいだ。私はおどけて、目に手を当ててメソメソ泣いている真似をして見せる。中谷さんはちょっとムッとした表情を見せて「愛ちゃん、後で覚えといてよ」と口パクで言った。それに舌をベーッと出して応える私。 「山神、やったな」 私の肩を叩きながら中山先輩が声を掛けてきた。 「あ、中山先輩、済みません。結局中谷さんに土をつけること出来ませんでした」 「なに言ってんだよ。今日の試合は最高だったよ」 「ありがとうございます」 私が頭を下げると、中山先輩はにっこりと笑顔を見せて片目を閉じた。 「中谷センパイ、山神センパイ、すごかったですぅ!」 晶ちゃんが言いながら、ボロボロ涙を流しつつ私と中谷さんに駆け寄る。 「あのねえ、私も愛ちゃんも笑ってるのに、なんであんたが泣いてるのよ」 中谷さんは呆れ声だ。 「だってだって、あたし、感動しましたぁ!」 「私たちの事より、晶ちゃんは自分のプロレスを精一杯頑張って。掟破りだったとはいえ、あの中山先輩に勝てるだけの実力があるんだから、もっと自信を持って。ね。自分はプロレスに向いてないなんて |
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