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20R ニューホープ後編

「あの、私の口から言うのもなんですけど、もしかして優勝決定戦に進出できなかったから、でしょうか?」
 と聞いた。が、中山先輩はその私の言葉に大きな声で笑い出す。
「このシリーズが始まる前から決めてた事だから、優勝できたとしても同じ事だよ。会社が決めてる海外武者修行は一年間だけど、私はそういう期限を決めないで、自分自身納得いくまで海外でやっていきたいと思ったから、社長にそうお願いしたんだ。期限を決めれないのだから、いったん退団という形にしてもらっただけだよ。でも、いつか大きくなって帰って来るから、山神もそれまでせいぜい頑張るんだね」
「でも、自分一人でって、どこにいくか目星はつけてるんですか?」
「ヨーロッパとアメリカだね。海外武者修行コースにあるメキシコには今のところ行くつもりはない。ルチャリブレ(メキシカンプロレス)を否定するわけじゃないし、どっちかと言うとむしろ好きな方なんだけど、私の目指すスタイルには合わないから。まずはヨーロッパでテクニックを磨いて、あとはアメリカで納得出来るところまでとことん本場のプロレスに揉まれるつもりだよ」
 中山先輩の話を聞く限り、もう完全に腹が据わっている。後輩の私が今更とやかく言うことなんて出来ない。
「解りました。じゃあいつか、トップレスラー同士としてすごい試合しましょう。私も頑張ります」
 言いながら握手しようと右手を差し出す。中山先輩はその手を握り返しながら
「ああ、今は取り合えずグッドラック、だ」
 と答えた。
「ところで山神、今日の試合、優勝決定戦なんだけど、中谷相手にどう戦うか考えてるのか?」
「あ……、その、リーグ戦では徹底的に攻めるという作戦だったんだけど、結局策士策に溺れる結果に
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