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19R ニューホープ中編は禁止じゃなかったのか、とか、本当に三つ入ったのか、とかレフェリーに抗議するも、後の祭りだった。私は、呆然としたまま、退場する晶ちゃんの後を追った。星取でいえば、これで中山先輩は優勝戦線から脱落、私が繰り上がる、ということは理解できるが、いまいち納得しきれない部分があった。 ホールから出たところで、私は晶ちゃんが指にテーピングを巻いていたことに気がついた。 「あ・あの、晶ちゃん? 前の試合で突き指とかしたのかな……?」 私が聞くと、晶ちゃんは額の血を拭おうともせず、黙ってテーピングを剥がした。何かが床に落ちる。見てみると、小さくカットされたカミソリだった。 「沙希さんのように何度も流血してたら額も生傷だらけでしょ。だからちょっとの衝撃ですぐ血が出るんだけど、一度も流血なんてしたことの無いあたしが鉄柱にぶつけられたところでタンコブが出来てお終いなのが普通で、そうそう流血なんてしないでしょ」 と、晶ちゃん。 「も・もしかして、この流血は自分で切ったの!?」 「うん。まさか血が出るとは中山センパイも思ってなかったみたいで驚いてたね。流血したのがあたしの勝因ってとこだね」 確かにあの時晶ちゃんの顔を見た中山先輩は、信じられないといった表情だった。 「でも、前座で大技なんかしたら、大変だよ。下手したらクビになっちゃう。私を決勝に行かせるための援護射撃にしては、ちょっとやりすぎじゃない……?」 「いいの」 |
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