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17R ベルト流出

「そりゃそうだよね、一度勝った相手である私のほうが楽だからね。そこいくと、森さんは超実力者。せ っかくベルト取ったのに短い天下じゃ嫌だろうね」
 と続ける。
 長谷川さんは顔を真っ赤にすると、沙希さんに殴りかかろうとした。あわててジャパンレディースの選 手たちが長谷川さんを押さえる。
 長谷川さんは沙希さんを睨みつけていたけど、しばらくすると落ち着いたのか、自分を押さえてる選手 たちに小さな声で
「もういい。大丈夫。放して」
 と言った。恐る恐る長谷川さんを解放する選手たち。
「沙希、最後に一つだけ教えて。沙希は本当にそれでいいワケ? 私に負けたんだよ。雪辱晴らしたく ないワケ?」
「ウチとジャパンレディースが業務提携結んでいる限り、雪辱晴らすチャンスはいくらだってあるよ。ただ 個人的な感情は抜きにしてでも、マッチメーカーとしてはベルトをNJWPに取り戻すのが先決なんだ。ベ ルトを取り戻す為に万全を期して森さんを挑戦者にする、それだけの事だよ」
 沙希さんの言葉に、長谷川さんは苦笑いを浮かべた。
「まあ、団体のエースの証であるベルトが無くなってしまったら大変だからね、確実に取り返せるだろう 選手に挑戦させるっていう作戦は、ある意味当然の事かもしれないワケね。でも沙希は森山さんなら私 にも勝てるだろうと踏んでるみたいだけど、そうは問屋が卸さないからね」
 長谷川さんはそう言うと、沙希さんに背を向けて、インタビュースペースの入り口のドアに向かって歩 き始めた。そして
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