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17R ベルト流出け無しだったそうだよ。総合の世界でヒクソン・グレイシーっていう柔術家が400戦無敗とか言ってるけ ど、そんなの全く問題にならないほどの大記録だよ」淡々と語る中谷さん。 「……なんか沙希さんが負けたというのに冷めてますね……」 「あのねえ、愛ちゃん。過ぎた事は仕方が無い、問題はこれからだよ。今度はジャパンレディース側に 乗り込んで対抗戦第二弾があるんだから」 『──認定証、長谷川美幸殿──』 リングの上で、認定証とチャンピオンベルトの授与のセレモニーが始まった。認定証を読んでいるの は、我らがNJWPの大島社長。ベルト多団体流出というのに、社長の顔もけっこうサバサバしていた。そ れどころか、ベルトを渡す時に一瞬笑みを浮かべた。その時、マイクの音声は切れていたけど、口の動 きは「おめでとう」と言っていた。 社長にしてみれば、ベルト流出は別にたいした事件ではないのかも知れない。それどころか経営者と しては、今日の興行が無事終わったという事の方が大事なのだろう。 NJWPのリングをジャパンレディース勢が独占し、ベルトを巻いた長谷川さんとマットに立てかけられた 認定証を中心にして記念撮影が行われようとしていた。NJWPのリングが他団体の選手に占領されてい る。はっきり言って、屈辱的で悔しい、全く面白くない光景だ。さっきまで淡々としていた、一見冷めたよ うにも見えていた中谷さんも、さすがに今のリング上の様子には悔しさが隠せないのか、拳をギュッと握 り締めていた。 |
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