もどる

17R ベルト流出

「あ、はい……」
 言いかけた言葉を飲み込んで、私はドアを開けた。
「済みません、インタビューはもう……。あ……」
 ドアの向こうに立っていたのは、石破選手だった。
「ここにいるって聞いたんで」
 石破選手はそう言うと笑顔を見せた。
 石破選手に気付いた沙希さんがいきなり大声を上げる。
「すぐ入ってもらって! そしたらドア閉めて厳重に鍵かけるのよ! 戦った者同士のこんなシーン、マ スコミとかに見られたらあることないこと書かれちゃう!」
 私は慌てて石破選手を部屋に入れると、廊下に誰もいない事を確認して鍵を掛けた。
「じゃ、私はアップするからね。ここから先はあんたたち二人の会話だから私は何も知らないから」
 沙希さんはそう言うと、中谷さんにウォーミングアップを手伝うように言った。が、中谷さんはモニター (森山さんの試合)に夢中になっていて沙希さんの声も全く聞こえていない。
 私は沙希さんに頭を下げると、石破選手に向き直る。
「あ・あの……、大丈夫……?」
 私の言葉に石破選手は苦笑した。
「マトモに顎打たれたからね〜。あの後、病院に行って念のため脳の検査したんだけど、幸い大事無い よ」
 良かった……。
「えっと、なんて言ったらいいのか……。ごめんなさい……」
前ページ
次ページ