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15R 対抗戦前夜ある日、私が試合のために会場入りしようとした時、どこからか私を呼ぶ声が聞こえた。「山神さん、山神さん」 「え? え?」 キョロキョロと周りを見回すと、人込みを掻き分けて見覚えのある男の人の顔が私の前に現れる。 「お久ッス!」 「あ、タッちゃん」 そう、彼の名は追っかけのタッちゃん。またの名を近藤達也。このギャグは前にも使ったけど、今となっては私は完璧にこのように認識している。 「聞きたい事があるんスけど」 「え? なに?」 「対抗戦のことなんスけど……」 私は慌てた。 「ちょっ! ストップ! そういう話は人気の無いとこに行ってから!」 言いながら私はタッちゃんの腕を引っ張り、会場である体育館の裏に移動した。 「こんな所まで連れて行くってことは、人には知られてはいけないってことッスね。ということは、対抗戦が行われるのはもう決定事項ッスか?」 キラキラと目を輝かせて聞くタッちゃんに、私は隠すことなく正直に話した。 「わかんない」 |
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