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13R 他団体控室で私は目が覚めた。「あ、愛ちゃん、気がついた? ったく、参っちゃったね。最後になってマジになるんだもん」 中谷さんが声をかけてくる。口調はいつもの中谷さんとなんら変わりは無かったけど、その表情は悔しさに満ち溢れていた。 「これが……トップレスラーと前座レスラーの差でしょうか……?」 「そうだといえばそうなんだけど……。でも私は絶対に諦めないからね。いつかこの差を縮めて、必ず追い抜くんだから」 確かに、今は敵わない相手かもしれないけど、私も中谷さんもまだまだ発展途上のレスラーだ。逆に長谷川さんはレスラーとして既に完成している。追いつき追い越す可能性は、私にも中谷さんにもあるんだ。 「そ・そうですよね。今はとりあえず勝たせてやったというところですよね。この借りは将来絶対に返しますよ」 私の言葉に中谷さんはようやく笑顔を見せた。 「そうだよね。それに、よく考えたら私らが負けたお陰で長谷川さんは対抗戦を実現させることが出来るかもしれないんだから、業界としては良かったのかもしれないし。噛ませ犬と言っちゃ、噛ませ犬なんだけど。長谷川さんは私らに感謝しなきゃいけない立場だぞ、なんてね」 |
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