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13R 他団体

 長谷川さんはそう言いながら、私の蹴り足を掴むと、もう片方の腕で私の首を抱え込むようにして一気に後方へ反り投げた。キャプチュードという技らしい。どう受身を取っていいのか解らないまま私はマットに叩きつけられた。さっきのラリアットのようにすぐ立ち上がることなんて出来ないほどのダメージを受けてしまい、私は全身の痛みにリング上をのた打ち回る。
 長谷川さんの顔が目に映った。冷ややかな目で私を見下ろしている。
 やられる……!?
 どんな相手にも最後まで諦めないという私の誓いを木っ端微塵に打ち砕くほど、その目は怖かった。私はこの瞬間、負けを確信した。

 長谷川さんは私のバックを取ると、私の両腕を背後から抱え込むように取った。そしてそのままスープレックス。両腕を取られたら受身の取りようが無い。私はほとんど意識の無い状態でレフェリーのカウントを三つ聞いた。タイガースープレックスという技だった。

「NJWPの前座レスラーは本来大技は禁止だということは知っている。お前には悪いことをした。だけど、沙希にたどり着くまで……、全面対抗戦を実現させるまで、私は絶対に負けるわけにはいかないワケよ」
 薄れ行く意識の中で私は長谷川さんの言葉を聞いた。


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