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13R 他団体

 しかし、長谷川さんは最後の意地で、カウントスリーギリギリで肩を上げてきた。
 でも、もう長谷川さんも限界だ。勝てる──!
「中谷さん! 私に決めさせてください!」
 ロープの外から身を乗り出すように、私はリング内に手を突き出した。
「え〜? ったくしょうがないなぁ。ここは一つ後輩に花を持たせてあげるよ」
 と、渋々タッチに応じる中谷さん。
 私はリング内に飛び込むと、長谷川さんを無理矢理起こしてバックを取った。そして一気に引っこ抜く。
 ──出来るだけ小さな弧を描いて落とすつもりでやるのよ──
 私は沙希さんの言葉を思い出しながら、自分なりのイメージでブリッジを作った。実戦で二回目となるジャーマンスープレックスホールドだ。
 そして私は自分の頭の中でカウントを取った。スリーのタイミングになっても長谷川さんはピクリとも動かず肩を上げる素振りも無い。
 勝った!
 ……しかし、レフェリーはカウントを数えなかった。ポジションが悪すぎて長谷川さんの足がロープに引っかかっていたのだ。
「な・なんで、今ので勝ちじゃないの!?」


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