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8R 道場パート2

 先シリーズ『ニューホープカップ』で中谷さんが、初出場でいきなり得点数で水野さんと同率二位を飾った事は、ファンやマスコミの間で大きな話題となっていた。私がそのことを知ったのは、ある日、朝起きていつものように中谷さんと一緒に合宿所から道場へ向かう道のりでの出来事だった。
「すみませ〜ん!」
 それは何の前触れもなく現れた。聞き覚えのある男性の声。
「会場だけじゃなくて合宿所の近くまで張り込んで……。一歩間違えたらストーカーだよ、“タッちゃん”!」
 そう、彼の名は追っかけのタッちゃん、またの名を近藤達也。……って逆か。
「中谷園子選手、サインください!」
 ……私の言葉は完全に無視されていた。
「サイン? いいよ、いいよ! これで私もトップレスラーになれるね!」
 タッちゃんは、中谷さんの言葉の意味も解らずにニコニコしていた。自分がサインを求めた選手や練習生のほとんどがエースクラスの選手になっているという現実を彼自身気付いてないみたい。
「いやぁ、カンドーしましたよ、ニューホープカップ最終戦! 中谷選手が学生時代柔道ですごい実績を残していた事、プロフィール見るまで知らなかったです。こんなのじゃマニア失格ッスね、すみません」
「あ、別に謝らなくてもいいんだけどね」
「雑誌見ましたか? プロレス総合誌では中谷選手をかなり大きく取り上げてましたし、女子プロ専門誌なんかは表紙ッスよ! 優勝した水野選手を差し置いて!」
「確かにこの週は他の団体とかも特に大きなビッグマッチって無かったけど、でも水野さんや紺野さんじゃなくて私が表紙!?」
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