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7R 新人戦

クシャクシャになっていく。
「中谷ちゃん、えらかったよ、よくやったよ。本当によくやったよ!」
 沙希さんが中谷さんを強く抱きしめた。

 その時、ホールの方からすごいどよめきが起こった。水野さんが優勝決定戦で試合開始早々、紺野さんのアゴにパンチ(というより空手の突き)を叩き込んでそのまま押さえ込み、わずか8秒で優勝を決めた、ということらしい。
「中谷ちゃんとの二試合で既に疲労も限界だったのね。わずかに残された力を全て一発に使い切ったってところか……。握り拳でのパンチは本当は反則なんだけどファイブカウント以内だったらお咎めは無いし。とにかくこれで上の人間の望みどおり、あの二人がワンツーフィニッシュを決めたわ。でも、本当の優勝者が誰かは見た人はみんなわかってるはず。今日の試合を見て上の人間がどう思うか、……見ものね」
 誰にとも無く沙希さんが呟いた。

 後日、テレビ局の方から以後はマッチメークには一切口出しはしないという申し出があった事を沙希さんから聞いた。
「……最後に勝ったのはこの私ね」
 沙希さんが笑いながら言った。
「え〜? 誰が誰に勝ったんですかぁ?」
 と、中谷さん。
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