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6R 前座戦線如月晶(きさらぎあきら)。私にとって初めての後輩の名前だ。厳密に言うと初めてではなくて、彼女が入門するまでにも何人かNJWPに入ってきた。でも、どう見ても私より素質ありそうな人達ばかりなのにみんな夜逃げしてしまった。私にとって本当の意味で定着した後輩は彼女が最初だった。身長は中谷さんよりほんの少しだが高くて、社長と同じ位だ。いわゆるギャル系でチャラチャラしていて、私を含めてみんな「こいつはすぐに辞める」と思ったけど、何故か辞めるそぶりは全く無い。性格もギャル系らしくブッ飛んでいる。私は中谷さん以上に規格外の性格の人を知らなかったが、彼女はそれを遥かに凌駕していた。 「……という訳で、御飯はこれこれだけの量を食べるのがノルマよ。体作りも大切だから」 道場や合宿所等の決まりを先輩として優しく教えたつもりだった。 「てゆーか、マジィ? 太っちゃうじゃん」 ピクッ。 「……で・でも、そのぶんトレーニングも、これでもかって程やるから、太るヒマなんて無いよ」 「チョー信じらんな〜い! そんなことしたら変な肉が付くじゃん!」 ピシッ(私の中で何かが切れた音)。 信じられないのはあなたよ! ここ(プロレス)を何だと思ってるの!? なめてんの!? 自分で言うのもなんだけど、私はそうそう怒らない温厚な人だと思っていた。ここ数年本気で怒った記憶は無い。そんな私をエキサイト(あ、いつの間にか私もプロレス的表現を使ってる)させるんだから、 |
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