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5R 巡業

 と言いかけた私の声を遮るように
「どぉも〜! これからも頑張るからね〜!」
 元気に手を振る中谷さん。この人……なんなの……?

「さあ〜て、愛ちゃん、色々聞かせて貰おうかな?」
 控室に戻ると中谷さんが悪戯っぽく笑った。
「な・何ですか?」
「沙希さんが私の相手って知ってたの?」
 ブンブン首を横に振る私。
「おっけい。ま、沙希さんがマッチメークを下っ端に言うはず無いからね」
 中谷さんはあっさり納得してくれた。
「この後の指示は聞いてる?」
 という質問に私は沙希さんに言われた事を伝える。
「……という訳でセミが始まったら戻るようにって事ですけど……」
「ん? 何?」
「セミってなんですか?」
 嫌な空気が私と中谷さんの間を漂った。
「セミファイナル。ファイナルマッチ、つまりメインイベントの一つ前の試合だよ。解ったかい? 新人?」
 という声に振り向くと南さんがいた。悪役レスラーに話し掛けられて、中谷さんの顔が強張るが、私は
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