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5R 巡業

 私は無我夢中で飛び出し、他の先輩と一緒に迫ってくるお客さんを掻き分けて通路を確保した。沙希 さんは私たちが作った通路をリングに向かって歩き出す。
 さっきまでキョトンとしていた中谷さんは完全にパニクッて踊りまくっていた。
 ……ご愁傷様……。

 結局試合は僅か1分23秒で腕ひしぎ逆十字固めで沙希さんの完封勝利だった。
「プロフィール見ると柔道出身だろ? それが腕十字で負けるなんて屈辱だろうな」
 と、お客さんの声。ふぅん、あの技、柔道の技なんだ。
「愛ちゃん、私はいいから中谷ちゃんについてあげて。中谷ちゃんのダメージが落ち着いたら二人はリ ングサイドでセミ前までセコンドやるように」
 沙希さんが以後の指示を私に言った。
「はい」
「メインの私の試合の準備があるから、セミが始まったら私のとこまで戻ってね」
「解りました」

 私は中谷さんに駆け寄って、肩を貸すと青コーナー側控室に向かおうとした。と、観客席から
「新人〜! チャンピオンの山吹相手によくやったぞ〜!」
 という声。それを合図に暖かい拍手が起こる。
「中谷さん、お客さんが……」
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