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プロローグ

 幼い頃から病弱だった私はそれを克服するためにスポーツジムに通っていた。いつの間にか普通の人と変わらないほどの健康な体にはなったが、体を鍛える楽しさに目覚めてしまったのか高校を卒業した今もジムに通っている。そういえば高校での体力測定では男子女子合わせても一番だったような。
 そんな私を陰で体力馬鹿とか言うクラスメートも何人かいた。そんな陰口には気付いていたが、私は全く気にならなかった。むしろ誰よりも体の弱かった私がここまで出来たことが誇らしかった。

 そんなある日、私の通っているジムにその人がやって来た。

「へ〜、この町にも結構いいジムがあるんだ〜」
 など言いながら、ジム内の設備を興味深そうに眺める彼女こそ、時の女子プロレス界きってのスーパースター、山吹沙希(やまぶきさき)だったのだが、プロレスなんて見たことの無かった私は彼女を見ても「わぁ、綺麗な人」と思っただけで、誰なのか解らなかった。その彼女が、その日たまたま紅一点だった私(いつもは結構女の人も来ているジムなんだけど)に気付いたのか、近づいて来た。
「わぁ、ウチでは私が一番タッパあるんだけどあなたはもっとあるね〜」
 と話し掛けてきた彼女。タッパってなに? プラスチックの容器の事? そんなものここには無いよ。
「ねえ、あなた、タッパどのくらいあるの?」
 と聞いてくる彼女だが、意味が解らない私はチンプンカンプンな返事をしてしまった。
「あ、あの、ウチの冷蔵庫の中、ですか?」
 彼女は一瞬ポカンとしたが、私が何を考えているのか気付いたらしくプッと吹き出した。
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