もどる |
壱:ゴキブリ会社から帰ってきた彼は、タイマーでセットした炊飯器を開けて飯が炊けている事を確認した。コンビニで買った惣菜をレンジに入れ、茶碗に飯をよそう彼。タイミングよく温まった惣菜と茶碗をテーブル代わりのこたつに運び、テレビを付ける。低俗なギャグでわざとらしい客席の笑いを誘っている他愛も無いバラエティーをたいした感情も持たずに眺めながら飯を口に運んだ時、あることを思い出した。 ビールを忘れていた。 彼は立ち上がり、冷蔵庫に向かった。目的の品を取り出した時、流しに動く物体があることに気付いた。 黒くて脂ぎった昆虫だった。 幼少期のトラウマで彼はその昆虫に恐怖を抱いていた。思わず水道の湯を全開にして洗剤を手に取る。そして昆虫に狙いを定めて大量に発射した。 熱湯と洗剤攻撃をまともに喰らった昆虫はもう既に死も直前だったが、彼は恐ろしさのあまり、なおも洗剤を浴びせ続ける。先日買ったばかりの洗剤が空になったところでようやく平静を取り戻した。 彼は泡まみれの昆虫の死体を排水口に流した。 その時、その昆虫に恐怖を感じている彼には、一瞬目が合ったように感じた。怨みに満ちた形相で睨まれているように見えた。 彼は気絶した。 |
あとがき |