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1:タイムストップ

「ついに時間を止めるマシンが完成したぞ!」
 とある研究所で博士が歓喜の声を上げた。
「さっそく実験してみよう」
 と言いながらスイッチに手を伸ばす博士を助手が制した。
「博士、もし時間を止めたところでこのマシンが故障したら、世界は止まったままになるという事になりませんか?」
 博士は笑いながら答えた。
「万が一にもこのマシンは壊れる事など無い。だが、もしそうなったとしても大丈夫だ。なぜなら、時間を止めると便宜上言っているが、正確には時間軸から外れるという事だからだ。つまり、私が元の時間軸に戻れなくなったとしてもお前やこの世界そのものには全く影響は無い」
「そうですか……。故障しても世界は止まらず時間は流れるという事は解りました。でも、博士が戻れなくなるという可能性もあるわけですよね」
「だから、故障などありえないと言っているだろう」
 博士はそう言うと、笑いながら一気にスイッチを押した。

 博士は死んだ。



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