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第七章

「ごめ〜ん、待ったぁ?」
 喫茶店でコーヒーをすすっていたミノルは、この声に振り向いた。
「待った。帰ろうと思った」
 待ち合わせの約束の時間から三十分以上過ぎていた。
「ごめ〜ん、ここの代金あたしが払うからぁ」
 言いながら、ミノルの向かいに腰を下ろす直子。
「普通呼び出したほうが先に着いて待っているもんだぞ」
「でも、あたしが遅れてもちゃんと待ってるって事は、あたしの用件が気になったからかな?」
 直子は、星来のことで話があると言ってミノルを呼び出したのだ。
「他の用件なら約束から一分過ぎた時点でもう帰ってた」
 ミノルの言葉に直子はクスクスと笑った。
「やっぱり、星来ちゃんのことになったら気が気でないって事かな?」
 直子の言葉にカッとなるミノル。
「え〜え〜! 直子様のお察しの通り、俺に取って星来は特別な存在になっちまってるよ! こう言えばいいんだろ?」
 ミノルは自棄になって大声をあげた。直子はキョトンとしている。
「今日は妙に素直なのねぇ……」
「ただな、その俺と星来の仲をこんがらがらせてるのは、直子、お前だぞ」
 ミノルの言葉に今度は直子がムッとした。
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